さらば!パンパンの財布よ
財布を軽くしたい私の、マイナンバーカード奮闘記
みなさんの「お財布」は今、どのくらいの厚みがありますか?
キャッシュレス決済の普及により、薄くてコンパクトな財布を持ち歩く方が増えた現代ですが、私たち士業の世界では、いまだに「財布がパンパンになりがち」という切実な悩みがあります。
というのも、取得した資格の数だけ、それを証明するカードが増えていくからです。私の場合は、宅建士証、行政書士証票に始まり、今後追加される予定の社労士証……。もちろんクレジットカードや診察券、各種会員証なども必要です。これらをすべて財布に入れていると、まるで分厚いトレーディングカードの束を持ち歩いているかのような圧迫感を感じるのです(改札でSuicaやPASMOがほぼ反応しないのも悩みの種です)。
そんな折、嬉しいお知らせが届きました。先日受講した「行政書士申請取次事務研修会」の合格証です。
無事に合格できた喜びを噛み締めつつも、ふと「あ、これでまた新しいカード(業界ではピンクカードと呼ばれています)が追加されて、お財布が厚くなるのか……」という一抹の不安がよぎりました。そこで私は、ある決意をしたのです。
「そうだ、マイナンバーカードに私の全スキルを集約しよう! デジタルを活用して、財布を軽くするぞ!」
快進撃のスタート、そしてぶつかった「壁」
意気揚々とスマートフォンを手に取り、「マイナポータル」のアプリを立ち上げました。最近は「国家資格のデジタル化」が進んでおり、対象の資格であればマイナンバーカードと連携して、スマホやPC上で公的に証明できるようになっているのです。
まずは、「追加可能な国家資格一覧」の画面を開きます。
「おっ、ある!」
リストの中にはしっかりと「行政書士」の文字がありました。画面の案内に従って暗証番号を入力し、ポチポチしていくだけで、あっという間に連携が完了……するはずでした。
が、なんと「スマートフォンには対応していません」という無情なエラーが!
しかたなく、パソコンを開いてカードリーダーをセットし、マイナンバーカードを読み込ませるという作業に切り替えました。カチカチカチ……作業自体は意外と簡単で、「ついに私もデジタル化の最先端に足を踏み入れた!」という高揚感がありました。
「よし、この調子でどんどん連携していくぞ!」
勢いづいた私は、リストをスクロールし、次は宅建士の連携を試みました。……が、何度リストを上から下へなぞっても、「宅地建物取引士」の文字がどこにも見当たりません。
「あれ? 同じ国家資格のはずなのに?」
どうやら、管轄している省庁の違い(行政書士は総務省、宅建士は国土交通省など)や、各業界のシステム改修の進み具合によって、今すぐマイナポータルで一括管理できる資格と、まだ対応していない資格があるようです。
「同じ士業なのに、管轄が違うとこうも違うのか……」と、日本のデジタル化におけるリアルな「縦割りの壁」を身をもって体験することになりました。
さらなる試練 社労士と免許証はどうなるの?
気を取り直して、「宅建士がダメなら、次は社労士だ!」と気持ちを切り替えました。しかし、ここでハタと重大な事実に気がつきます。
「あ、まだ事務指定講習の真っ最中だった……」
そうなんです。試験には無事合格したものの、社会保険労務士として正式に登録されるのは、すべての研修が終わる8月の予定。マイナポータル上でデジタル連携する以前に、まずは「修行(研修)」を終わらせなければならないという、現実が待っていました。社労士のデジタル化は、夏までお預けです。
「取得した国家資格3種類のうち、デジタル化できたのは1種類だけか。それならせめて、運転免許証はデジタル化したい!」
最後の希望を託し、最近話題の「運転免許証とマイナンバーカードの一体化」へと舵を切りました。これなら誰もが使う一般的な機能ですし、きっとスムーズにいくはずです。
期待を込めて手続きを進めると、画面に無情にもこんな趣旨のメッセージが出てきました。
『運転免許センター等へお越しください』
「それはないよね?」
思わずツッコミを入れてしまいました。「自宅にいながら完結するんじゃなかったの!?」「結局、リアルな移動が必要なの!?」
デジタル化推進の波に乗り、すべてをスマートに終わらせようとした私の前に最後に立ちはだかったのは、まさかの「物理的な出頭」という試練でした。
デジタル化の「現在地」とは
この一連のドタバタ劇を終えて、深く考えさせられました。
今回、私がパソコンやスマホを前に体験したドタバタは、まさに今の日本社会が抱える「デジタル化の現在地」そのものではないでしょうか。
スマホで完結するかと思いきや、結局パソコンとカードリーダーが必要だったもの(行政書士)
手続きの前に、まずはアナログな期間や準備が必要なもの(社労士)
そもそも、システムの対象リストにすら入っていないもの(宅建士)
デジタル化するための事前準備として、結局は窓口での対面手続きを求められるもの(運転免許証)
この「デジタル化といいながら面倒なもの」が入り混じったバラバラで中途半端な状態。これこそが、多くの事業者様や一般の方々が、オンライン申請やデジタル手続きの最中に戸惑い、つまずいてしまう最大の原因です。
「デジタルだから簡単です! すべてスマホで終わります!」と一口に言えないのが、今の日本社会のリアルなのです。
だからこそ、日頃から複雑な手続きと向き合っている私たち士業が、混乱するお客様のナビゲーターにならなければならないと強く再確認しました。
実は、日本行政書士会連合会は、デジタル庁と「誰一人取り残されないデジタル社会」実現のために連携協定書を締結しています。私たち行政書士は、国のデジタル推進を現場で支える役割も担っているのです。
財布は少し軽くなり、フットワークはより軽く?!
というわけで、私の「お財布スリム化計画」は、現時点ではフルコンプリートには至りませんでした。
運転免許センターへの遠征はスケジュールの都合でもう少し先になりそうですし、社労士の登録が完了する8月までは、しばらく「おあずけ」が続きます。
しかし、行政書士証票が無事にデジタル連携できたことで、ほんの数ミリではありますが、確実にお財布は薄くなりました。何より、「デジタルとアナログの谷間」を自ら体験したことで、デジタル分野でのサポートの重要性を再認識することができました。
「デジタル化やAIによって仕事がなくなる」といわれる士業ですが、中途半端なデジタル化は新たなニーズを生み出しているようです。どうか昔ながらのアナログで複雑な手続きのお悩みも、デジタルならではの新しい悩みも、すべてまとめて私どもにお任せください! 今なら、いつも以上にお悩みに深く共感できるような気がします。